東京で刺激を受けて菓子職人の道へ

ー本日はよろしくお願いします。こちらの店舗はいつ頃オープンされたんでしょうか?
昭和57年にオープンしました。お菓子作りは23歳の頃から始めたのでもう50年以上お菓子を作り続けていますね。
ー今って何歳ですか…?
来年で80になります。
ー(すごい。すごすぎる。)
初めからお菓子作りをしていきたいと考えていたんですか?
いえ、初めは東京に本社を持つ商社に勤めていて、タンニン等の製品扱っていました。
ー全然お菓子作りとはジャンルが違いますよね。そこからお菓子作りを志したきっかけなどはあったんでしょうか。
東京に転勤になったことがきっかけですね。私が東京に向かった頃は東京オリンピックなど高度経済成長期の真っ只中でした。商社ということもあって色んな商売をしている方とお話する機会があったんです。
ー当時の東京なんて刺激しかなさそうです。
会社が日本橋にあったんですけど、職人の方が沢山いる地域だったんです。そこで会う人会う人が、「この商品どうしたらいいと思う?」って聞いてくるんですよ。全然知識もない若かった頃の自分に。

ー昔の職人の方は頑固っていうイメージがあるんですけど、全然違いますね
そうなんですよ。「もっといいものを作りたい」という志が凄く高いなって感じたんです。その姿勢に感銘を受けまして。
ーそこからお菓子作りに繋がっていくんですね。
当時は景気が凄い良かったので会社の経費を使ったりして、函館では見たことも食べたことも無いような料理屋に良く連れて行ってもらっていたんです。職人と話して、その方々の姿勢を見ていたので、この料理を作っている人も職人だよな、料理で人をこれだけ感動させるってすごいなって感じる様になっていたんです。
ーすごい素敵な感覚ですね。(自分も経費使って美味しいもの食べたいな)
そう思うようになってからは、自分の父親が函館の宝来町で大福屋を経営していたこともあって、東京の有名なお菓子屋を回って、お菓子を研究していました。
地元に戻り、お菓子作りの道へ進む

ーそうして函館に戻ってきて修行を積み始めるんですね。
函館に戻ってからは洋菓子店で3〜4年、せんべい屋で2年ほど修行していました。
ーいつ頃から独立を考えていたんですか?
初めから考えていました。自分で考えて作ったお菓子をお客さんに食べてもらうようになったのはせんべい屋で修行していた時期です。
ーどんなせんべいを考えて作られていたんですか?
せんべいを作っていた訳でも無いですし、そのせんべい屋で提供していたわけでも無いんです。当時、函館の赤レンガ倉庫では船にモノを積み込むため、作業員の方が多く働いていたんです。その方達に向けて直接手売りで大福を売っていました。
ー副業…?
そうですね。今で言う副業のようなことをしてました。当時は全然寝てなかったので、大変な時期でした(笑)
買ってくれていた人たちから段々と「◯◯を作って欲しい」という要望をもらえるようになっていったんです。
仕事の量が多くてせんべい屋で働けなくなってきたので、自分で店舗を構えることになりました。
ー副業が本業になるパターンですね。すごい。
七飯町に店舗を構えていたんですが、評判が良かったようで函館の方から来店される方もありました。それもあって函館に店舗を出したり、函館にまつわるお菓子も作るようになりました。

ーお菓子作りをしてきた中で転機となったことはありましたか?
有名なお茶の先生にお菓子を作って欲しいと依頼されたことは大きな転機でしたね。お茶の先生って京都で修行してきたりとお菓子に精通しているんです。
ー良いプレッシャーがかかりますね。
そうなんです。自分もこのままじゃいけないと思って、京都に足を運んで有名な老舗の視察だったり、中にはレシピを教えてくれる方までいて。
ーレシピって教えてもらえるものなんですか?!
私もびっくりしました(笑)
京こなしという京都の蒸しようかんについて教えていただいて、函館に戻ってきてすぐに試作して、自分なりにアレンジを加えてお茶の先生にお出ししたところ評価していただきました。
ー今でも京都には足を運んでいたりしますか?
コロナが流行する前はよく行っていました。京都に限らず有名な菓子屋があれば足を運びんで学びたいと思っています。
喜夢良の考えるお菓子の捉え方

ーお菓子作りで大事にしていることはありますか?
「食べて美味しい、見て美味しい」「お菓子はコミュニケーションのきっかけのひとつ」ということは意識してやってきました。
ー「コミュニケーションのきっかけのひとつ」とはどういうことでしょうか?
「食べて美味しい、見て美味しい」はお菓子として一番大事なことであって、当たり前のことだと思ってます。でもそれだけじゃ味気ないじゃないですか。例えば、お土産でお菓子持っていって、美味しい以外感想が出てこないとせっかく持って行ったのに何かハリがないじゃないですか。
ー確かに「どこのですか」「美味しいですね」とかそれくらいで済んでることがほとんどだと思います。
せっかくお土産にお菓子を買っていただくんですから、お土産話しの一つや二つその場で話せるお菓子にしたいなと思ってます。
ーそれで函館にある名所だったり、この地域の歴史にまつわるお菓子を作っているんですね。
この「龍紋」っていうお菓子は明治時代、五稜郭や大沼が日本でも有数の天然氷の産地だったことから着想を得て作りました。氷をイメージして寒天を砂糖の層でコーティングして氷のようなサクッというか、シャクっというか、独特な食感を生み出しています。

ー初めてこんな食感のお菓子食べたんですけど、どうやって作っているんですか…?
お菓子作りにも商社に勤めていた頃の知識が使えているのは大きいですね。お米でも「アルファ化」って良く使われるじゃないですか。
ー確かに何となく聞いたことがあります。
この龍紋もどうやったらイメージしている食感が作れるか、どうやったら寒天と中に入っている小豆が一体になるか、お菓子作りも論理的に考えながら作っています。
ーお菓子も化学のように捉えて作るものなんですね。今後やっていきたいことはありますか?
もう80歳になりますが、まだまだ新商品を開発していきたいと思っています。
ーまだまだ現役で職人ですね!本日はありがとうございました!
編集後記
まだまだ新商品を開発したいと話すように、店頭には、中にみたらしが詰まったみたらし団子がテスト販売されていました。年齢を感じさせない職人魂というか、追求していく気持ちが行動に表れていて「自分も年取った時にこんな姿勢で何かに取り組んでいられるのかな」と思っていました。お土産に、創業当時から販売している「木の間餅」や日本百銘菓に選ばれた「はこだて大三坂」などなどいただきました。和菓子から洋菓子まで全部うまい。

ライターが選ぶ!菓子舗喜夢良おすすめの商品

ななえアップルチョコレート3種セット
りんごの形をした最中の中に、チョコレートと地元七飯町産のりんごを使用したコンポートを詰め込んだ可愛らしい和と洋がミックスされたお菓子です。色ごとに、ミルクチョコレート味、赤りんご味、青りんご味の3種類をセットにしています。
菓子舗喜夢良
名称 | 有限会社菓子舗喜夢良 |
おすすめ | ななえアップルチョコレート3種セット |
住所 | 〒041-1111 北海道亀田郡七飯町本町4丁目5−20 |
営業時間 | 8:30~19:00 |
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