函館とロシアの深い関係
函館とロシアの関わりは、ペリーが来航した1854年。ペリー来航の4カ月後、ロシア軍艦も函館へ入港。日米和親条約が結ばれた翌年の1855年には、日露和親条約を締結。1858年には日本で初めてのロシア領事館が函館に開設されました。
当時、アメリカ領事館は商業分野に特化した仕事を行っていたが、ロシアは医療や科学、政治経済など、幅広いスタッフが赴任しており、日本が初めて深い関わりを持った西洋国はロシアとも言われています。
また、クリスマスツリーも日本で函館が最初だと言われています。初代駐日ロシア領事ヨシフ・ゴシケビッチがロシアのクリスマスである「ヨルカ祭」を祝ったときに立てたとされています。
旧ロシア領事館は日本で唯一現存するロシア帝国が建築した現存する建物であったりと、話せばキリがないほど、函館とロシアには深い関わりがあります。
そんなロシアとの深い関わりを持つ函館の元町で「ロシア・東欧雑貨直輸入店 チャイカ」があります。ロシアの陶器インペリアル・ポーセレンやマトリョーシカなどの工芸品などが並び、ご夫婦で経営されています。
そんなチャイカの代表であるパドスーシヌィー夏実さんにお話しを聞いてきました。
ロシアとの関わり。きっかけは人との出会い。

ー本日はよろしくお願いします。店舗のお話やオリジナル商品についてお話を聞きたいところですが、まずはロシアと関わることになったきっかけを教えてください。
学生時代、文化論を研究するゼミに所属していまして、指導教官がロシア文学者で詩人・作家だったんです。ロシアの構造主義と文学の方法を中心に学び、教授の人柄に触れたことがきっかけです。
ー卒業後からずっと「チャイカ」のようにロシアと関係した仕事をしていたのでしょうか?
いえ、卒業後して働き出した後に、2000年から2001年に語学留学という形でロシアのサンクトペテルブルクに渡りました。

ーリカレント教育、学び直しという形だったんですね。
帰国してからはフリーの翻訳家、通訳として働き始めました。
夫は函館にあるロシア極東大学で教授として働いていた方なんですが、私が常々、ロシアと直接関われるようなことをしたいと話していたんです。
そうしたら、ロシアの伝統的な陶器「インペリアルポーセレン」を日本で販売してみないかという話を、インペリアル・ポーセレンの国際部で働いている夫の友人からお話をいただいたんです。
ーその陶器がこちらですね。

私が販売する以前、ソ連崩壊後まもなく日本での販売を手がけていた方がいたようなんですが、「社会主義経済」から資本主義経済へと社会が変わったばかりで商習慣の違うロシア人との商売は長続きしなかったようです。
ーそういった理由で販売中止になるなんてことがあったんですね。
2012年から「インペリアルポーセレン」をネット通販で販売を始めました。
ー販売してからの反応はどのようなものだったのでしょうか?
ロシア好きの方々に見つけていただいて、「あのサイトで買えるよ!」と口コミで広めていただけました。
店舗には自分が好きだと思えるものを並べていく

ーそこから店舗への販売へ広げていこうとなったんですね。
もちろんそれも関係していますが、店舗のオープンは思いつきというか、勢いだったんです。
ー勢い?
元町に店舗を構えているのですが、そこがいつもの散歩のコースだったんです。たまたまテナントを募集しているのを見て、「人生ももう半ば。今やるって決めないといつやるの!」っていう変なスイッチが入っちゃったんです(笑)
ーそんな気分でオープンできるものなんですか?!
それはもう大変でした(笑)
募集しているのを見つけたのが2013年の冬で、オープンしたのが2014年6月。オープンまで半年程度で進めたのですが、店舗で販売できる商材は「インペリアルポーセレン」のみで、今みたいに沢山の雑貨や食品に囲まれるまでは時間がかかりました。
ー雑貨も種類がすごい多いですよね。これらはどのような基準で選ばれているのでしょうか?

私が好きなものばかり集めています(笑)
ー素敵です…!現地から輸入されているんですよね?
ロシアの工房やクリエイターの方と直接連絡を取って仕入れさせていただいています。
ーそれも知り合いの方から紹介してもらいながらなんでしょうか?
もちろんそれもあるんですが、最近ではSNSを使って色々探しています。いいなと思ったものがあればSNS上で直接連絡してやりとりして仕入れています。
ーこだわりの詰まった商品が多そうですね。最近のおすすめは何かありますか?

ロシアには白樺の樹皮を使った伝統的な工芸品があるんですが、小物入れなど白樺のみで作り上げたものがほとんどだったんです。ですが、最近ではステンレスのマグカップに巻きつけたり、グラスに巻きつけたりとハイブリットな商品がたくさん出てきているんです。

ー普段まったく可愛いものとか持ってないんですけど、話を聞いてると欲しくなっちゃいます(笑)
オリジナル商品「函館サモワール」のこだわり

ー一番はじめに手がけたオリジナル商品はどちらですか?
「ヴァレーニエ」です。
ーヴァレーニエとはなんでしょうか…?
ヴァレーニエはロシアでは有名なジャムとコンポートの間にあるような、果物の形を残しながらサラリと仕上げた砂糖煮のことなんです。
夫がこどもの頃から馴染んでいるもので、自宅でもよく作ってくれていたんです。
ぜひロシアの文化の一部として、輸入して売りたいな思っていたのですが輸入が難しく、日本で作っているところもあったんですが、どうしても自分達が想像しているものとは違ったんです。
それなら自分達で作るしかないだろうって思って、作ることにしました。
ーこちらの「フルーツハニー」はどのような経緯で作られたのでしょうか?

今から2年ほど前に、ロシアに足を運んだ際に、以前まで目にしなかった「フルーツハニー」というものがスーパーに数多く並んでいたんです。
蜂蜜で果物を煮詰めたものなんですが、それがすっごい美味しくて、これはぜひ日本でも食べてもらいたいと思って、帰国してすぐ開発に取り掛かりました。
ーフルーツハニーの開発はうまく進んだのでしょうか?
開発から発売まで1年半以上はかかっています。
ー1年半もですか!
フルーツハニーは果物が持つ色鮮やかさをいかに出せるかというのも一つのポイントなんですが、よくある黄金色の蜂蜜だと、どうしても綺麗に色が出せなかったんです。
そこで世界各国のさまざまな蜂蜜を取り寄せて試していたんです。
そうしたらキルギス共和国の真っ白い蜂蜜を使ったら、すごい綺麗に果物の色が出たんです。
ー白い蜂蜜なんて見たことないです。
今までに食べたことのないような蜂蜜で、クセが無くてとっても美味しいんです。
そこに北海道各地からハスカップやカシス、ラズベリーなど、色鮮やかな美味しい果物を使ってフルーツハニーを作っています。
ーどのようにして食べるのがおすすめでしょうか?
パンやクラッカーに塗ったり、ヨーグルトやアイス、ホットドリンクにするのもおすすめです。
今後は抹茶味など、もっと様々な味の開発を進めていきたいですね。
※オリジナル商品の全てを店舗の2階で、夫のパドスーシヌィー・ワレ―リーさんが丹精込めて手作りで作り上げています。

ロシア文化を楽しんでもらいたい

ー今後挑戦していきたいことは何かありますか?
ロシア音楽を楽しめるコンサートを開きたいと思っています。
ーロシア音楽って聞いたことないかもしれません…
例えばロシアの伝統的な弦楽器でバラライカという楽器があります。
ーギターみたいですね。
日本で祖父の代からロシア民謡を演奏している方がいて、その方のファンが、店舗の方で音楽を流してほしいとCDをいただいたんです。それで実際に音楽をかけせていただいているんです。
その方も函館にお呼びしてコンサートは開きたいなと思っています。
ー本日はありがとうございました!
編集後記
「今やるしかない」とか「ないなら自分で作るしかない」とか、とりあえずやってみる精神が溢れ出していてかっこいいなと思いながらお話を伺っていました。雑貨も食品も音楽も、夏実さん本人が好きなものしか集めていないそうで、好きなものに溢れた空間で音楽コンサートでピロシキとかボルシチとかビーフストロガノフとか食べたい。絶対楽しい。
ライターが選ぶ!チャイカおすすめの商品

フルーツハニーギフトセット
蜂蜜で北海道産の果物を煮込んだ新しいスプレッド。ラズベリー・カシス・ハスカップ・アップル・シーベリーのセット。パンやヨーグルトにはもちろん、お湯に溶かしてホットドリンクとして飲むのもおすすめです。
チャイカ
名称 | チャイカ合同会社 ロシア東欧雑貨直輸入店チャイカ |
おすすめ | フルーツハニーギフトセット |
住所 | 〒040-0054 北海道函館市元町7番7号 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
定休日 | 火曜 |
発送可能日 | – |
備考 | – |