経営

1932年創業北海道コーヒー文化の始まり函館美鈴

今回は函館市民なら誰もが知る「珈琲焙煎工房 美鈴」を運営する美鈴商事の高橋一美さんに「函館のコーヒー文化」「珈琲屋としてのこだわり」について伺ってきました。

異国情緒あふれる街・函館とコーヒーの歴史

江戸時代初期、鎖国していた日本で唯一世界との交流が認められていた長崎県の出島にてオランダ人が初めて日本にコーヒーを持ち込んだとされています。そんな長崎と同じ港町である函館では江戸時代後期に開国の影響を日本の中でもいち早く受け、箱館奉行所に駐留する役人にコーヒー豆が配られていました。当時は嗜好品としてではなく、健康長寿に効果のある薬として重宝されていました。

ー当時の函館のコーヒー文化ってどんな感じだったんですか?

そうですね。まず、函館市民がコーヒーを日常的に飲むようになったのは昭和に入ってからです。昭和10年代には40店舗近い喫茶店が並ぶほどコーヒー文化が根付いていました。当時函館の人口(約20万人)より5倍近い人口を持つ京都市(約90万人)では2〜3店舗だったというので、どれだけ函館市民に根付いていたかイメージがしやすいですよね。

ー確かに…。

[当時の写真を見せていただく]

ーすごい…今よりも(?)ハイカラだ。

本当ですよね。当時は今よりも喫茶店で働くことがステータスだと思われていたみたいですよ。
流行ってはいたんですけどね、当時のコーヒーの飲み方が今とは全然違ったみたいで。コーヒーをさらし袋で濾して、グツグツと煮出し、豆は出がらしを何度も使い回すという飲み方が広まっていたんです。

ーそれは美味しいんですか…?

美味しいとは言えるものではなかったようです。香りも少なければ味も薄い。
そこで弊社の創業者である鈴木武二が函館の人に東京のカフェで体感した焙煎したての香りや本当のコーヒーの美味しさを伝えたい。そんな思いを持って昭和7年「コーヒーと洋食器の店」として創業しました。北海道では初めてのコーヒー屋だったそうです。

ー創業者が本場の味を持ち込んだことで、北海道の珈琲文化が始まったわけですね!
でも、それだけの店舗数があったら本当のコーヒーの飲み方も広まりにくそうですよね。

創業当時は「豆を多く買わせるつもりだな」などとかなり批判を浴びていたそうです。それでも武二はアメリカから輸入した焙煎機を用いて焙煎した豆を持って、一杯一杯出がらしを使うことなく、新しい豆を使うと美味しいコーヒーが飲めるということを各喫茶店に根気強く伝えていきました。そうして、だんだんと本当のコーヒーの美味しさが広まり、認められていきました。

ー創業当時は喫茶店ではなくコーヒー豆を販売する会社だったんですね。喫茶店の美鈴コーヒーはいつオープンしたんですか?

第二次世界大戦の影響でコーヒー豆を輸入することができなくなり、函館大火の影響で函館市内の喫茶店が消失するなど大変な状況ではありましたが、昭和21年に「美鈴」として函館の大門地区に直営の喫茶店をオープンしました。「美鈴」という店名は函館市民から公募して決まったものだそうです。

焙煎が何よりも重要

ー美鈴珈琲で一番大事にしていることは何ですか?

美鈴では何よりも焙煎が重要だと考えています。どんなに高級な豆でも中心までしっかり焼いて水分を均一に飛ばさないと美味しいコーヒーを淹れることはできません。美鈴では函館焙煎工場内に焙煎機を設置しています、一番美味しいと考える焙煎度合いを実現するためコンピューターによって制御していますが、気温や湿度によって焙煎度合いは変化してしまうので、焙煎士が最終的な焙煎度合いを決めています。

ー機械だけではなく、人の目でも判断するメリットはどんなことがありますか?

炭火による焙煎も行えることですね。炭火の火力は機械で制御することが難しく、美味しさは焙煎士の腕に左右されます。炭火だけでなく通常の焙煎でも人の目を介して焙煎を行っているので、炭火でも焙煎度合いを判断する力が養われています。

ーなるほど!通常の焙煎も炭火での焙煎もどちらも人の目を介すことで美味しくなるってことですね!

はい。美鈴では焙煎士の目と北海道初の珈琲屋としての長年のノウハウを合せて焙煎しています。炭焼コーヒーは北海道駒ヶ岳産の引き締まった良質な木炭にこだわり使用を続け、安定した品質をを提供しています。

ー店舗でも焙煎にこだわっていますよね

店舗では生豆の状態で量り売りを行っています。生豆を購入していただいて、店舗内にジェットロースターというその場で焙煎が可能な機械を導入しています。お客さんが生豆の状態から選び、3〜4分で焙煎したてのコーヒー豆をその場で購入することができます。

コーヒー屋としてできることを愚直に突き詰める

ー店舗には美鈴珈琲の名を冠したお土産品が多く陳列されていますよね。

美鈴では飲み物としてのコーヒーにこだわらず、コーヒーを利用した商品開発にも力を入れています。ガラナやビールなど地元企業とのコラボレーションやクッキーやキャラメル、コーヒーカレーなど王道から意外性のある商品まで、コーヒー屋としてコーヒーの可能性をを追求しています。

ーどれも美味しそうです!
北海道初のコーヒー屋として今後やっていきたいことはありますか?

そうですね、北海道に限らず全国で美鈴が考える美味しいコーヒーを広めていきたいです。
現在代表取締役を勤める鈴木修平は東日本コーヒー商工組合の理事も勤めています。後継者がいないために存続が難しいコーヒー店の経営を引き受けたり、ワインのソムリエのようにコーヒーにも資格制度を設けないことには文化として海外に引けを取ってしまうと考えて、「J.C.Q.A.コーヒーインストラクター検定(全日本コーヒー商工組合連合会の資格認定制度)」の立ち上げにも尽力し、現在総責任者を務めています。

ー自社だけじゃなく、コーヒー業界全体を見渡しているんですね。

弊社では従業員の約5割がこのコーヒーインストラクターの資格を持っています。愚直にコーヒーのプロとして、地域の人に正しいコーヒーの知識を伝えるという創業当時から変わらないスタンスをもとに店舗作りを行っています。地域の人から信頼される、愛される店舗作りを意識しながら、今後は北海道だけでなく、全国への新店舗展開を目指して、店舗運営に力を注いでいきたいです。

取材を終えて
取材をするまでは「昔からある函館にある喫茶店」というイメージしか持ち合わせていませんでしたが、北海道コーヒーの祖のような存在で、コーヒーだけじゃなく、ケーキ製造や業務用スーパーを運営しているなど幅広い事業を行っているんだと初めて知ることができました。歴史を聞くとすぐに行ってみたくなる。んー、とりあえず、店舗に行ってコーヒーカレーは食べてみたい。

ABOUT ME
波江 真
ロカラの波江です。1998年北海道函館市生まれ。新卒でロカラに入社し現在1年目。趣味は「筋トレ」「スポーツ観戦」「ダンス&ボーカル系」など様々。北海道に面白い仕事を創りたいと意気込んで日々奮闘中。多趣味を生かして、いろんな切り口で北海道の魅力を発信します!